電子レンジ

京都在住。MUSICAライターになれなかった男が創作したりレビューを書いたり

BABY BABY/銀杏BOYZ

GOING STEADY、通称ゴイステと呼ばれるバンドがあった。


初めて聴いたのは2000年頃。友達に録音してもらった赤色のMDに詰め込まれたゴイステのアルバムを繰り返し聴いていたことを今でも思い出せる。


特に「STAND BY ME」という曲のイントロのベースラインに憧れて、ベースを弾くようになり、初めて「STAND BY ME」を人前で披露した時の、あの静寂の時を忘れることが出来ない。新たな扉を開けるきっかけであり、原点の一つであると自信を持って言える。


いつしかゴイステは銀杏BOYZと名前を変えた後、青春という名の使い古されたブランドを剥ぎ捨てて、ありのままの性、欲望、自身の中で整理しきれない感情を叫び、今までの音楽性をぶち壊すように濁し続け、狂気に映りかねない音楽へ変化していったように思う。


その当時の僕といえば「非日常×エロ≒リアリティ」という画期的な方程式を自身の中に生み出したが故に、狂ったように妄想や作られた、ニセのリアリティを追い求める反面、「好きな女の子とは友達以上にどうしても進めなくてフラれる」というトラウマを抱えていたものだから、リアルな恋や性に対して変に神聖なものを感じてしまい、銀杏BOYZの表現する現在進行中のある種の革命には同感しきれないことがあり、いつしか聴く機会も減ってしまっていた。


そして今、その現在進行形であるミネタ氏が叫び歌う。その姿、その声から発せられるメロディ全てが、今までのバンド人生を通過せずには得られなかったかのように、今最も表現に適したスタイルが作り上げられているように思う。

そして代表曲である「BABY BABY」という曲が世代を越えても未だ愛される理由も、あの頃のように歌うのではなく、ミネタ氏自身が当時の曲に込めた思いを背負いながら現在進行形の表現に乗せることで、新たなリスナーはしかり、出会ったあの時から一緒に同じ年数を過ごしてきた今までのリスナーの心に、改めて刺さるのではないかと思う。


あの頃のゴイステにも銀杏BOYZにも二度と会うことは無いだろう。ただ僕らも彼らと同じ年数を過ごすことにより着実に進化を遂げている。悲しくはない。僕らが前に進む限り、道の途中でまた同じように進化途中の彼に、あの曲に出会えるのだから。