電子レンジ

京都在住。MUSICAライターになれなかった男が創作したりレビューを書いたり

ハローグッバイ/かりゆし58

始発が走り出す前、駅の駐輪場で煙草に火をつける。煙が目にしみると同時に忘れていた眠気が姿を現す。煙草を吸い込んで、白い息と共に吐き出すけ煙がいいね。なんて、カッコつけたことを言いながら。


さっきまで話し尽くした話題を持ち返して、乾いた声で笑い合う。いつもは車通りの多い道に余韻が響いて、この世界に生き残ったような特別な感覚がある。


やがて、原付からヘルメットを取り出す音が静かな街に響いて、『じゃあ、そろそろ行くわ。』と帰るタイミングを見計らう頃、『実は俺、この前、あいつに告白してフラれた。。』と、共通の友人である女の子への玉砕エピソードが飛び出して、結局始発が走り出すまで話していたあの頃。今よりも別れが惜しくなかったあの頃。次の約束もしないまま、1人また1人一日の始まりに向かって帰って行く。


そんな友人達と会う機会は1年以上開くことも多くなったけれど、10年以上たった今でも同じ話題を持ち返し、次に会う約束も確実に出来やしないけれど、越えていった夜の繰り返しが今の絆を作っていったんだろう。


かりゆし58が歌う『ハローグッバイ』の中にある、『距離も一つの繋がりなんだと。気付いたのならば、また会えるよ。』

というフレーズは、住む所もバラバラになった友人との物理的な距離も、それぞれ大事にする家族や仕事仲間、その先にある僕らの関係、離れてしまった心理的な距離があるけれども、ずっと近くにいるより一定の距離感でいることにより絆が深まって行くことを教えてくれているように思う。


繋がっている限りきっとまた会える。そんな心の暖かさを与えてくれる。また、会おう。